初対面で本音で話す社長

私は様々な社長と出会ってきたが、初対面にして本音で話をしてくれる社長はまずいないと言っても過言ではないだろう。

もちろんフィーリングや趣味の話をして意気投合することはごく稀ではあるが無いことは無い。

私が一万人の社長に応対してきた中で一番感銘を受けた社長には数年前に出会えた。

25年のキャリアのまさに20年目にあたる。邂逅と言い換えてもいいだろう。

社長との衝撃的な出会い

社長との衝撃的な出会い

先に言っておこう。その社長とは一年間まともに話をしたことがなかった。

私は新規の営業も行っているが、既存の広告を引き継ぎ継続していただく法人営業も行っている。

その社長は弊社の五本の指に入る大口のスポンサー様で、長年広告を継続してくれている。

私は、その社長を受け持っていた先輩が一年後に転勤の為、引継ぎという形で担当させてもらった。

さすがに先輩は営業の達人と言われるだけあってコミュニケーション能力は会社内で群を抜いている。ちなみに、役職は部長であるから管理職ではない私よりも信頼されているのは明らかである。

お客様が初対面の私に放った第一声は、

社長社長

部長から管理職にもついていないペーペーに引継ぎとはウチも舐められたものだ!

と、明らかに不満じみた言葉を浴びせられた。

先輩先輩

彼は真面目で優秀なセールスマンですよ!

すかさず先輩がフォローを入れてくれたが、社長は私にほとんど口を利いてくれなかった。

私も、多額の広告費を投資していただいている大口顧客ということもあって少々気後れがあったことは否めない。

しかし、初対面でこのような言葉を浴びせられるとは思ってもいなかった。私は怒りを抑えつつも場の空気を悪くしてはいけないと思い、懸命の愛想笑いでその場をしのいだ。

長く感じた屈辱的な一年間

長い屈辱的な一年間

それからというもの、社長と出会うときの私は、ただ先輩に同行し、同席し、相槌を打つ。

このようなシーンは営業マンにとっては何よりも苦痛。言われたことを何も文句を言わずこなすただのロボット。

自分が認められていないという情けなさと無力感でいっぱいである。

こんなことが一年間も続いたのである。

私もさすがに信頼されていない自分自身に腹立たしさを感じ、同時に社長にも苦手意識を抱きつつあった。

しかし私は仕事だけは手を抜くまいと社長の繁栄に繋がる提案と努力に最善を尽くしていた。

それから間もなくして、ついに私にとってのエポックが起こった。それは定期的に訪問して一年ほど過ぎた事だった。

いつもの様に何気ない世間話を社長と先輩が話している途中に、

社長社長

〇〇君も釣りに来ないか?

と、声を掛けてくれたのだ。

社長と先輩が釣りにちょくちょく遊びに行っていた事は知っていたのだが、私は釣りの経験が一度もなく、釣りの話が始まる度にいつも会話には入ることができなかった。

しかし、初めて社長が積極的に声を掛けてくれた事が私にとって嬉しくてたまらず、

私

はい、喜んで!

と、何処かの元気な居酒屋の店員みたいなセリフを喋った記憶がある。

これを機に社長との距離はグッと縮まり、会話も少しずつではあるが増えていったのである。

後日、予定通り釣りに行き楽しいひと時を過ごさせてもらった。

とは言っても、釣り初心者の私に優しくレクチャーして頂き、おまけに魚までプレゼントしてくれたのだが…(笑)

とにかく社長との距離が縮まった事で、今までの屈辱が嘘のように積極的に会話をすることが可能となったのである。

当然仕事もスムーズに運ぶことができ、本音トークも毎日話すことができた。

やがて先輩も転勤となり、私は晴れて一本立ちとなったのである。

本音で話せる社長に質問

社長に本音で質問

私はある日、社長にこう質問した。

私

なぜ、私と一年間話をしてくれなかったのですか…?

私は社長に嫌われているのではないか?と思いましたよ…。

すると、社長は暫し目をつぶりこう言った。

社長社長

私はあなたを試していたのだよ。

当初はペーペーなので仕事が出来ないと思っていたが、困難な状況の中で私の事業について真剣に向き合ってくれた。

また、私が今後展開しようとしているニーズに応えた提案を行ってくれた。

一年間試した結果、あなたに広告を全て任せようと決心したのだよ。

と、私にとって最高の誉め言葉を贈ってくれたのだ。

私は営業マンをやっていてこの日ほど感激したことはない。

またこの様なことがあるから営業マンは辞められない。自分の行動がそのまま成果に繋がる、一つの醍醐味と言ってもいいだろう。

そのスタンスは数年経過した今日まで続けているし、今でも感謝の気持ちを胸に最高の提案を行っている。