先輩がリストラされ社長を任された私

私のクライアントに会社の売上の1%を占めている大口の社長さんがいる。

その社長の業種は同業他社も多く激戦の市場だ。初の広告出稿時から大きな投資で勝負を賭けてきた口数は少ないが、ポジティブかつアグレッシブな社長だ。現在も十数年間に亘って広告を出稿してくれている。

私が担当になったきっかけは、先輩が小さなミスからトラブルになりお客様からリストラされたために営業経験の豊富な私に白羽の矢が立ったのだ。

無口で不愛想な社長との出会い

無口な社長

初めてお会いした際の印象は、『地味で不愛想な人』という記憶が濃く残っている。

実際口数が少なく、こちらが話をしていても聞いているのか聞いていないのか全く分からない様子で会話も弾むことがなかったのである。まさにお口チャック状態。

何を考えているのかも分からず、自分だけ違う世界にいるような感覚を持っている少し変わった人だった。

今までの私の手法が通じず、何を話しかけても「…」と沈黙が続くのである。これには少々まいった。

私は訪問後、車の中で何か原因があったのではないのかとしばし思案した。

私

私が何か癪に障るようなことをしたのか…

私

前任者のトラブルをまだ引きずっているのか…

色々と考えを巡らせてはみたが全く思い浮かばない…。

このままでは今後の仕事運びに支障をきたしてしまう…と思っていたところパッと妙案が浮かんできた。

それは…今までと逆のことをやってみよう!

いうなれば北国と太陽殺法である。

編み出した打開策

前任者は締め切りを遵守するあまりお客様に対して事務的な営業活動を行い、せかした挙句に暴言を吐いていたのである。

確かに、この社長と波長が合う人は少ないであろうと思われるが、自らが歩み寄らないと心を開いてくれるわけがない。

そこで、思い切って舵を取ってみたわけだ。

しかし、締め切りは何があろうとも必ず守ってもらわないといけない。

私は太陽政策で攻めてみようと思い、なるべく自分のペースで話すのではなく相手のペースに合わせた手法をとったのである。

締め切りを前倒しに伝え、ギリギリまで待つ。

また、相手のニーズを探り最適な提案を行うことによって信頼関係を構築していった。

この策は時間がかかったがピタッとハマったのである。

ジワリジワリ太陽の光を浴びせることによって社長も”本音”という服を脱いでいく。

時には仕事帰りに訪問をして、

私

一杯やりませんか?

などと、積極的に声を掛けてみる。

こういったちょっとした気配りが寡黙な人には効果てきめんである。

やがて私のほうにペースが傾いてきた。北国で吹き飛ばすやり方がこの社長は嫌いだったのだ。

今では本音や悩みを私に打ち明けてくれるまでに心を開いてくれている。営業で何かと困ったら、逆のことをやってみるのもいいかもしれない。