社長は不動産王

私は営業マンとして一万人以上の社長を応対させていただいているのだが、その中でも最上位に属する困ったちゃんに出会うこともあった。

その社長は不動産業を営んでいる。

不動産業というとバブル時代には地上げなどのを行い、私たちサラリーマンとは桁外れな収入を得ていた方も多々存在する。

その社長も多分に漏れずバブル期はおろか、現在においても莫大な収入と資産を所有している。

いわば不動産王と呼んでも過言ではないであろう。

私の憶測ではあるが、きっと自己でビルを所有し、各地のコーポ・マンションから賃貸収入を得ているに違いない!

財を成した社長のタイプは2つに分かれる

世の中には成功者と呼ばれる社長連中は星の数ほど存在するが、私の経験上において財を成した社長を大きく分けると2つのタイプに分かれる。

一つ目

成金社長

成功者の証とばかりに身に着けている物はブランド品、もちろん車はドイツ車、豪邸に住み、高級な食事とお酒で毎晩が宴会である。

普通のサラリーマンとは桁が一つ違ったお金を平気で深く考えもせず投資する。

自ずと態度は横柄になり、人を見下すような言葉使いに変わり、感情の起伏が激しい。多くの人は成金と呼ぶだろう。

2つ目

質素な社長

その逆で生活は慎ましく、あまり贅沢を好まない、高級車も乗りまわさず、一般の人と同じような暮らし、食事も至って質素である。

必要なときに必要な分だけお金を投資する。しかし、勝負を賭ける時は一般人には到底及びのつかいない決断をする。

物腰も柔らかく、目上や目下関係なく言葉使いも丁寧、穏やかな性格で自然と人が付いてくる。

どちらが正しいかは分からないが、敵を作らないリスクは圧倒的に後者である。どちらにせよ、成功者であることに変わりはない。

見つけ出した突破口

成金社長に対する突破口

私が出会った社長は残念ながら前者のタイプであった。

初対面から見下した物言いはもちろんの事、商談中に社長の電話が掛かってきた後に機嫌が悪くなり追い返されたこともしばしばである。

アポの約束は守らず、気に入らないことがあるとすぐに怒鳴り返す。

もうこうなると手の打ち様もなく従ったほうが得策である。

こちらとしては締め切りの期限が近づきイライラと不安で精神的に参ってしまいそうになる。

その様な社長にどうやって突破口を開いたのかお話しするとしよう。

それは、自分自身が道化師(ピエロ)になってしまう事だ!

サーカスを思い出してみてほしい、ハラハラドキドキする空中ブランコやスリルのある綱渡り、はたまた恐怖心を煽る猛獣使いなど…。観客は息を飲み込みながら観賞するのだ。

しかし、人間の集中力とは長時間は持たない様に出来ている。

そこで箸休め程度にピエロの登場というわけだ。

集中して疲れた観客を気分転換させる役割にピエロの間の抜けた芸は最適である。

私はこの社長には正面を切って当たっていくよりも、少し間の抜けたピエロの様に変化球で攻めてみようと閃いたのである。

プライドを捨て、どんなに怒られようとも、どんなに追い返されようとも必死に食らいつき、毎日社長の会社を訪問し続けたのである。

心が折れそうになっても数週間必ず顔を出し続けていた。

するとある日、社長は微笑みながら私にこう言ってきた。

社長社長

もういいよ!あんたには負けた!

好きにしなさい!

そう、社長は私に“バカ負け”をしたのである。

望外の言葉を掛けてもらった私は、信じられないという面持ちを浮かべていると、

社長社長

あんたの根性を試していたんだ!

普通の人間は数日でウチには来なくなる。そこまでウチを重要に思ってくれているのならば任せたぞ!

私は努力が実ったのとホッとした気持ちでしばらく茫然と立ちすくんでいた。

社長に一礼し、会社から出た時に吹いていた柔らかな風のことを私は決して忘れる事はないだろう。